品川ラグビー コーチング講習会


「子ども自らが考え、動くプレーを引き出すために」元日本代表WTB小野澤宏時氏

 11月5日(日)、品川区にある都立小山台高校内にて、近隣ラグビースクールなどの指導者、保護者を集めたラグビーの指導者講習会を行ないました。

 品川区ラグビー協会が主催したこのセッション、講師は、ラグビー元日本代表ウイングの小野澤宏時選手が務めました。小野澤氏はプロ選手としてサントリー、キヤノンなどで活躍し、なお現役選手。その一方で、近年は大学院に通い中学高校の教員免許を取得するなど、ラグビーの選手育成と普及のための活動を積み重ねています。

 この日は、小野澤氏がメーカーと共同開発したタグラグビー用品も使って講習が進みました。小学校授業への、タグラグビー採用を目指した商品だけに、着脱のしやすさは子どもたちにも好評!

「子どもが自ら考えて動く、選手自身が考えてプレーすることは、発育発達の上でも、ラグビーのパフォーマンスのためにも重要」

 実際に子どもたちコーチたちも体を動かしながらの講習で、小野澤氏は折に触れ自発的なプレーの大切さを説いていました。講習会には区外からの指導者、会場となった小山台高校ラグビー班の生徒など約100名が集まり、「ザワ流」の指導論に耳を傾けました。


講習シーン


参加者の感想

●子どもが当事者意識を持てること【あやさん/しながわバンブーRFC保護者】

 

先ほど、息子に「今日はどうだった?」と聞いてみたところ、面白かった!と言っていました。

 

普段の練習と何が違って面白かったの?と聞いたところ、

 

・自分達で考える時間をもらえた。

・言い方が優しかった。

・指示が無かったから、自分達の好きなようにやれた。

 

との事でした。

 

私自身、日ごろ息子に対してつい言ってしまうこと、してしまうことがあります。やろうとする意欲を認めるより先に、できていないことを指摘してしまう。見ているともどかしくて答えを伝えてしまう。指導者の皆さんが子どもにそうしてしまうのは、ラグビーを通して伝えたいという情熱を持ってくださっているからだとも感じました。

 

 

●主体性と即興性 【町田佳路/小山台ラグビー班OB、ウルサイ㈱】

 

素敵な時間ありがとうございました!

そしてとても感動しました!

 

普段私はラグビーの指導者ではなく、

学校現場ではない私塾の立場で、子どもたちの即興性を養う形を模索しています。即興性とは「どんな局面においても適切に考え、行動できる力を作る」ことだと考えており、今の答えが1つでない時代にとても必要な能力だと考えています。

 

そんな中、あの子どもたちのゲームを見て、びっくりしました。

うちの子どもは野球やダンスをしていますが、子どもたちが主体的にあんなに楽しいそうに作戦を考え、すぐに実行して、それをまた振り返り、新たなプランを立て、実行するなんていう場面を見たことがありません。それはもちろん小野沢さんのファシリテーションのうまさもあると思います。

 

高速なPDCAをあの場でできること、そしてそこに身体性を伴うこと、

さらに、ラグビーボールが産むランダム性を最大限に演出しているなと感じました。ボールを後ろにというラグビーの大原則をぶち壊すから生まれる誰でも参加できる要素も含めて、あのゲームを含めた空間がとても素晴らしい教育の場になるなと予感しました。

 

私自身、高校時代にラグビーに出会い、創造性や即興性の楽しさを知り、そこが今の自分の原動力となっており、何かしらラグビーを取り入れたいなと思っていましたが、経験の面だったりで敷居が高く感じでいましたが、これならと私達でもできるのでは?と思ったのも事実ですし、参加する方もラグビーのルールを知らなくてもできるという楽しさがあるのも魅力だと感じました。

 

もし今後何かできることがあるのであれば、小山台高校やバンブーと品川区での活動、そして何か私が普段活動をしているところでも何かできたらと考えています。

 

 

●小野澤さんが「どう教えるか」を教えなかった意味。【石井さん/しながわバンブーRFCコーチ】

 

グランドでのボールゲームの後に、お話を聞きました。

小野澤さんを中心にイスを丸く並べてトークセッションのような雰囲気の中、最

初に『どのような話がいいですか?』という問いかけがありました。この質問こ

そ、『今』、『ここで』、『仲間と』、『どういう』時間を過ごして充実するか

考えて楽しもう、という今回の研修の本質だったと思います。

 

成長曲線に合致した練習メニューとか、自分で考えて物事に取り組む姿勢とか、

私ももし小野澤さんのこのようなお考えがなければ、言い方を変えれば『知識』

を増やすことだけを期待して臨んだことでしょう。

小野澤さんのラグビーキャリアはもちろん知らない人はいないほどに立派です。

ご自身がどのようにそこまで至ったか。その経験の中から具体的に提言する(言語

化する)ことも可能だったと思います。

 

しかし、それでは経験からの知識が一方通行に話されたということになりかねま

せん。

 

ボールゲームのルール説明から始まり1時間少々のゲームの中で小野澤さんが子供

たちとどういう風に対話するか自ら示して下さいました。

その対話のなかからどんどん子供たちの動きが組織化され自発的能動的なチーム

プレーが見られるようになってきました。

それはご本人の備える雰囲気ももちろんありますが、誰でもできることだ

とおっしゃっていました。

 

それはどういうものか??具体的なお話はありません。。。

 

じつはこのことが、非言語でありながら、その時その瞬間に必要を人と通じ

合う能力の重要さをボールゲームを通じて示してくれたものと思っています。

 

話を聞く姿勢とよく言われます。それは文字通り体の姿勢や返事を指すと多くの

場合理解されていますね。しかし、返事はいいけど理解していないということも

よくあることです。

 

つまり大人が子供たちと関わっていくにあたっては、体の姿勢や返事などで顕示することをしつけるよりも重要なことがあるのではないでし

ょうか?

 

『対話し理解し今ここで協働し仲間と一緒にいる時間を楽しむ心』が育つ環境と

雰囲気を作ることを考えて、これからも子供たちと一緒に楽しく時間を過ごせる

ように、子供たちと一緒にいる以上は大人こその努力をしていきたい思いました。

 


メディア掲載

・東京中日スポーツ(11月28日付け・17面)